きゅうり

 

盛々夏野菜のハードエッセイ & ショートストーリー 【思想、心理、書評、劇評、感想、あらすじ】
 

 

 
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口撃を受けているとき、われわれは何が最も苦しいのだろう? 第一に永続性、つまり口撃が永遠につづくかもしれないという恐れであろう。第二に再現性、つまり今はおさまってもまた際限なくくりかえされるかもしれないという恐れであろう。これらの考えに襲われると絶望的な気分になり、反射的に、口撃を止めたくなり、反応してしまう。

こういうとき、反応の戦略には二種類ある。ひとつは相手の主張の論理的矛盾を突き、理屈でねじ伏せようする戦略。もうひとつは相手の理不尽な要求にしたがい、機嫌をとる戦略だ。しかしどちらも相手の神経を逆撫でし、口撃をエスカレートさせる。というのも、相手は自分の主張が論理的に破綻していることくらい百も承知なのだ。それに、相手の不満は、言語化された要求だけ通れば解消されるという体のものではない。要するに、ただ漠然と苦しくて、不満で、テンパってしまったのだ。したがって、論理的矛盾を突かれればますますいきり立つし、要求が通れば、それでも不満がおさまらないのでますます他の要求をしたくなる。大人げない行動にちがいないが、大人げないと決めつけたところで相手が恥じ入って行動を変えるわけではない。

しかし、このことは一筋の光明ではないだろうか? なぜなら、口撃の「永続性」「再現性」が、われわれの反応によって賦活されるのだとしたら、これらを止めるには反応しなければよいことになる。このように、人間関係のトラブルには原因と結果が循環していることがある。その原因と結果を構成している衝動の循環をどこか一か所で断てばいい。

しかも、われわれが苦痛を感じるツボはこの「永続性」「再現性」であった。言いかえれば、口撃の継続時間が有限であり、再現性もさほどではないと考えることができれば、口撃を受けることは苦しいけれども絶望するほどではない。

では、「反応しない」とはどういうことなのか? 期待をさせておいて梯子をはずすようで申し訳ないけれど、今の俺はたいした処方箋を用意できていない。おそらく「深くかかわらずに受け流す」ことであろう。

しかし一方ではこういう懸念も持つ。つまり、相手は「かかわらない」という選択自体を自分に対する「攻撃」と解釈し、恐怖心にかられて自己防衛のために反撃してくるかもしれないということだ。

ついでに言っておくと、口撃があまりに激しいときは自分の身を守るために席をはずすしかないと思うのだが、相手は「逃げる気か」と追いすがってくるかもしれない。そういうときのためにおぼえておきたいことは、相手を口撃(攻撃)に駆りたてているエンジンは「不安」や「恐怖心」だということだ。われわれが反論するたびに相手は自分の存在を否定されたと感じて恐れおののき、それゆえに反撃をしかける。われわれが席をはずそうとすると、相手はそれを自分に対する「あてつけ」「不信の表明」「挑戦」と受け取り、自分は完全に孤立してしまい、ひとりで戦いぬくしかないのだと絶望的な決意をする。したがって、そういうときは「私はこれから席をはずすけれども、それはあなたに対するあてつけではなくて、自分の都合でそうするだけなのだ」ということを、その時点の相手に届く言葉で丁寧に伝える必要があるかもしれない。そして、われわれがうまく切り抜けて席をはずすことに成功すれば、彼もまた攻撃する必要がなくなり、楽になるはずなのだ。

攻撃を受けている側にそういう配慮をせよと言うのは残酷かもしれないが、一層の攻撃を受けないように、スイッチを切っておく必要はあるだろう。それに、われわれと相手のどちらが苦しいかといったら、おそらく彼のほうが苦しいのだ。われわれとしては自業自得と言いたいところだが、たとえそのとおりだとしても、苦しいものは苦しいのである。

このエッセイは、口撃と反応の過程を素描して理論化する試みであった。後半歯切れが悪くなり、尻つぼみになってきたとはいえ、俺としては、現在の俺の実力の範囲内でよく書けていると思う。しかし実際の口撃の現場で起こることはもっと泥臭い。信頼のおける専門家に寄りそってもらいながらすこしずつ解決していくことをお勧めする。それから、「アサーション」を勉強することも役に立つかもしれない。

なお、以上のことは、「あなたを陥れようとして計画的にしかけられている口撃」に関しては全く役に立たないばかりか、かえってあなたを追いつめるかもしれない。その場合は全く別の対処が必要である。  
テーマ * 心の持ち方 ジャンル * 心と身体

 

 

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盛々夏野菜

Author:盛々夏野菜

男性、既婚、事務系サラリーマン。
現代思想フェチだが、本を読むのが遅いのであまり多くは読めない。地底人生活を経て現在は臨床心理に関心がある。新鮮な胡瓜が好き。
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