きゅうり

 

盛々夏野菜のハードエッセイ & ショートストーリー 【思想、心理、書評、劇評、感想、あらすじ】
 

 

 
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俺は眼精疲労とのつきあいが長いのだが、特効薬はないし、寝ても癒らないし、一度患うと一週間は消えない厄介なやつだ。それが、本書のワークを実行したら数分で消えたのだ。

やりかたはこうだ。仰向けに寝そべり、手の人差し指、中指、薬指をそろえ、その三本指の腹のあたりで、まぶたの上から眼球に触れる(「固まっている筋肉のゆるめ方」33ページ)。たったこれだけなのだが、数分つづけると眼筋が芯からゆるんでくる。信じられないかもしれないがそうなるのだ。

いちおう理屈を述べれば、指で触れる行為が生体センサーを活性化させるので、緊張(凝り)の情報が滞りなく脳に伝達され、脳は遅ればせながら対処に動き出す(緊張をとく指令を出す)というわけ。理にかなっている。むりに揉みほぐそうとすれば、身体は反動によってかえって緊張するだけだからな。

次に、眼精疲労にならない技術である。PCの作業をするとき、ディスプレイ上の情報を「捉えよう」とするのではなく、「受け取る」ように見ればいい(「楽に目を使う方法・その2」126ページ)(注1)。これを実行してみて、俺は「目を凝らす」ことがなくなったし、文字情報を正確に得ようとしてディスプレイに顔を近づけることもなくなった。今では、まったく疲労しないというわけにはいかないけれども、対処可能な範囲の疲労になっている。

本書はこのように即効性のあるテクニックが満載であり、ミリオンセラーにならないのが不思議なほどである。疲れを取り、疲れを予防することがこれほど簡単なんて。藤本さんの施術者としての経験と、探究心の賜物であろう。一家に一冊、必携の書だ。俺は本書によって、健康に生きる自信を手に入れたと言ってもいい。

本書の中にふんだんに盛られたワークがどれも強力な効能を発揮する秘密は、著者・藤本さんによる、現代人のストレスと身体との関係についての深い洞察である。見たくないものを見つづけ、聞きたくない話を聞かされ、嗅ぎたくないにおいをかぎ、言いたいことをガマンさせられる現代人は、自己防衛のため必然的に目、耳、鼻、口を緊張させる。しかし裏を返せば、これら感覚器官に由来する疲れは、感覚器官そのものに働きかけるワークによって解消可能だし、一方では、感覚器官のしなやかな使い方をおぼえることによって、不快な刺激を侵入させず、したがって疲れをためずにいることも可能なのだ。

本書のシャープな記述が頂点に達するのは「痛み」の考察であろう。俺は「痛み」の対処についての考え方を百八十度転換させられた。つまり、「痛み」が生じたとき、われわれは当然ながら痛みの部位に意識をフォーカスし、それへの対処を考えようとする。たとえば痛み止めをのむとか、もみほぐすとか。しかしそれが大きな間違いだと藤本さんは述べている。われわれは痛みを感じるとその部分を全体から切り離して、健康な部分を守ろうとするが、それは、せっかく身体という大きな鍋があるのに、その鍋にわざわざ仕切りを入れ、狭いスペースに具材(痛み)を押し込んで調理するようなものだ。その狭いスペースに感覚が集中するので、調理しきれなくなり、痛みはいっそう手に負えなくなる。こういう場合は、仕切りを外して、鍋(身体)全体の大きな調理スペースがあることを思い出すだけでいい(「部分的な痛みや違和感が全身を覆う理由」102ページ)。鍋全体で受けとめれば、調理可能であることは自明の理だからだ。
この後は、鍋(身体)全体を思い出すワークの具体的な記述がつづく。しかし、上記の事実が理解できてしまえば、痛みの問題はワークを実行する前に解決してしまうこともあり得るだろう。「痛み」の強さが、症状の深刻さではなく、対処のまずさ(痛みの部位に感覚を集中させること)を表現しているだけだということが分かれば、あとはただその痛みを「やりすごす」だけで十分かもしれないからだ。もちろん、外傷とか臓器の損傷のように痛みの原因が明確な場合は別だ。

そうだ、これも言っておかなきゃ。本書のガイドにしたがって目、耳、鼻、口を上手に使えば、疲れ知らずの身体が手に入ることになっているが、それでも全身がガチガチに固まってどうにもならないこともあるだろう。本書はこういう場合の処方箋として究極のワークを用意している(「それでも疲れてしまったときにすること」137ページ)。椅子にかけ、両目で左耳を見るように意識すると、頭が左方向に回転していき、これにともなって背骨がねじれていく。この現象を利用し、決して無理な力を加えることなく、完全に後ろを振り返る状態になるまで背骨をねじってみよう(何度かくりかえしながら、すこしずつねじれの深さを増していくとよい)。この「ねじれ」が筋肉の凝りを巻き込んで伸ばしていき、左半身が芯からほぐれていく。もちろん左が済んだら右も同様に行おう。

最後の第4章「自分の軸のつくり方」では、「身体技法」と「催眠ワーク」が重なりあう領域へと果敢に分け入っていく。
(1)3人の司令官(頭の中の司令官、胸の中の司令官、腹の中の司令官)をつくるワークであるが、これらは順に、脳のレベル、スピリチュアルレベル、身体レベルと理解しておけば大きな間違いではあるまい。3つの中でおそらく日本人にとって一番大切なのは「胸の司令官をつくる」(「「胸」の中の司令官」174ページ)ワークであろう。不安や不満のためにキューっとつまってしまった胸の空間を取り戻し、自分の軸をつくるワークだ。俺は今のところあまりうまくできないのだけれど。
(2)他者との間の距離感を感じるワーク。他者と私の間に「つっかい棒」が介在しているイメージをもつと、心理的な距離感も保つことができる。

(レビュー終わり)

最後に本書の形式的な難点を二つ指摘しておく。もっとも内容は申し分ないので、そこは誤解のないように。
(1)造本が悪い。用紙が厚くて固く、ページがすぐ閉じてしまい、開いておくのに苦労する。特に本を見ながら実行するワークが多いので問題なのだ。そこで俺は本書の全ページにしっかり開き癖をつけ、書見台を使って読むことにした。
(2)独特のフォントを使用していて、内容がすっと頭に入ってこない(美しいフォントなのだけれど)。しかし本書は電子書籍にもなっている。こっちなら馴染みのフォントで読めるわけだ。俺は愛用のiPhone + Kinoppyで読んだらすっと頭に入った。なお、電子書籍ならば造本の問題もないのでお勧めである。

(注1)俺の場合、「目を楽に使う方法・その3」の「トンボの目で見る」はうまく行かなかった。かえって目が疲れてしまって。

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(2012/07/03)
藤本 靖

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Author:盛々夏野菜

男性、既婚、事務系サラリーマン。
現代思想フェチだが、本を読むのが遅いのであまり多くは読めない。地底人生活を経て現在は臨床心理に関心がある。新鮮な胡瓜が好き。
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