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盛々夏野菜のハードエッセイ & ショートストーリー 【思想、心理、書評、劇評、感想、あらすじ】
 

 

 
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7月4日発売の本書を8月2日に買ったら、すでに第2刷だった。
地元の大型書店(オリオン書房ノルテ店)には平積みが二山あった。そもそもPHP文庫の平積みスペース自体、お世辞にも広いとは言えないのだが。
石原加受子先生の著書が広く受けいれられている証拠であろう。今や、日本のメンタルヘルス書籍は同氏を抜きにして語ることができない。知識を得るためでなく、自分の心の健康だけが目的ならば、専門書を読むよりも同氏の本を読んだほうがいいかも知れない。

かまえて読みにかかると拍子抜けするくらいに読みやすいのだが、切れ味の鋭さは一級である。この手の軽めのタイトルの本にありがちなエッセイ風の「読み物」ではない。プロとしての知識と経験を惜しみなくつぎ込んだ「紙上カウンセリング」の実践であり、視野狭窄におちいっている俺たち読者に変化を促すべく、丁寧に書かれた労作である。

簡単に読めるし、絶対に読んで損はないので、先回りして内容を紹介するのはあまり気が進まないのだが、ほんのさわりだけ述べておこう。
石原先生の立場は「自分中心心理学」であり、同氏の著作で常にやり玉に上がるのは、その反対の「他者中心思考」である。本書に登場する「他者中心思考」の人びとは、他者からの頼まれごとを断ることができない。しかも、断れずに引きうけてしまったあとで、「どうして私ばっかり損をするのか」とふてくされる。この人びとには、自分に「引きうけない自由」があるなどとは思いもよらないのだ。
この「いつも自分が損をする」という経験が、職場の上司・同僚、夫婦、母娘の人間関係を例として俎上に載せられる。
そして話題は「損得」の思考にも及ぶ。損得の思考にとらわれた人は人生を楽しむことができない。なぜなら、損得という借り物の尺度を優先して考える習慣のために、「自分が何を望んでいるか」を感じる能力を失っているからだ。「損をしないこと」が至上命令なので、必要や自分の欲望に関係なく、得られるかぎりのものを得ておかなければ気が済まない。

しかし、ここからが石原先生のすごいところであり、類書の著者を寄せつけないところなのだが、同氏は決して経験の批判的記述で終わらせないのだ。「他者中心」の思考にとらわれた俺たちが、いかにすればもっと楽に生きられるのか、いかにすれば「他者中心」の思考を抜けだして「自分中心」に生きられるようになるか、そのテクニックを、具体的に、しかもただちに実行可能な方法で語ってくれる。豊富なカウンセリング経験と、臨床心理学の豊富な知識に裏打ちされた核心を突く語りには即効性がある。

本書によって救われる人は多いだろう。とかく被害妄想におちいりがちな、すべての日本人に薦めたい名著である。

「どうして私ばっかり」と思ったとき読む本 (PHP文庫)「どうして私ばっかり」と思ったとき読む本 (PHP文庫)
(2012/07/04)
石原 加受子

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何気なく読み始めた書物を、途中まで読んだところで、おお、これは名著だと確信するときがある。その瞬間から、一気に読書スピードが落ちる。一字一句読み飛ばすまいという心理から自然に丁寧な読み方となり、一方では先に進むのが勿体なくなって少し読んではボーっとし、また少し読んではボーっとする。

本書がそれだった。前々回のブログで予告した時は冒頭1/3程度まで読んだところだった。もちろんその時点で好感触があったから紹介を予告したのだが、その時は悪書『「こころのクセ」を考える』に対抗する良書の一つという評価だった。さらに読み進んで、上記の現象に見舞われた。

著者の豊富なカウンセリング経験の精華というべき、深い洞察と即効性のある処方箋が、これでもかというほど詰め込まれている。心理学書と感じさせないほど平明な言葉で綴られているが、すこし丁寧に読めば、読者は今まで自分が苦しんできた理由を理解するだろうし、過酷な一大決心をすることなく、生きかたを変えるための行動をただちに実行できるだろう。

この2年間、俺が何十冊という心理学書から少しずつ吸収して自分のものとしてきた理論と実践が、この一冊にほとんど入っている。類書数冊分のテーマを惜しみなく一冊に凝縮し、しかも心理学を知らない読者の頭にも一読でスーッと入っていくように、表現は考えぬかれている。そして、カウンセラーとしての長いキャリアを持つ著者にしか書けない、手軽で効果的な処方箋の数々。俺もすぐ実行してみたいと思ったのがいくつもある。一冊目で本書に出会った人は幸福というほかない。むしろ嫉妬したくなる。

ベースになっている理論は、マインドフルネス、アサーティブネス、家族療法、共依存などであろうか。NLPもかな。もちろん理論のための理論に陥ることなく、問題解決のためのツールとしての扱いであるし、本文中にこれらの用語は一度も登場しない。
話題が途中で脱線し、脱線が本線になってしまうような結構の不備はあるが、そんなことは本書の価値をすこしも傷つけない。

著者の立場は「自分中心心理学」。自己チューではない(自己チューはむしろ他者中心の思考法により過剰に防衛的・攻撃的となった人のこと)。
しかし俺はここで下手な要約をして皆さんが本書を実際に手に取る機会を邪魔したくない。
しかも、簡潔にして練り上げられた記述。俺の出る幕などないのだ。

というわけで、以下では、本書がどんなにすごいか、その片鱗に接していただくため、章・節タイトルの名称や、なるべく短い抜き書きを、箇条書き形式・ページ番号付でお目にかける。気になる部分は、ぜひ本書に直接当たって理解してほしい。


・「私にとって、どっちがいいだろうか」このつぶやきは”思考”ですね。「私は、これがしたい!(あるいは、したくない!)」これが”感情”です。……自分の気持ちや感情を脇に追いやったままで、適切な判断をすることはできません。なぜなら、あなたの”感情”がそれに抵抗するからです。032

・いまこそ「私」が心地よい生きかたを選ぶ! 061

・「他者中心」だと身も心もヘトヘトに…… 068

・そんな感情を抑えて平気なふりをして、やり過ごそうとすればするほど、あなたのマイナス感情は解消されずに増大していきます。 071

・もっと自分で自分をいたわってあげよう 078

・「ああ、こんな感じが、自分の感情を受け入れるということなんですね」 079

・「相手が正しいかどうか」は関係ない 082

・もし、あなたが「相手を傷つけたくない。私も傷つきたくない」という状態に置かれたとき、あなたは、どちらを選択するでしょうか……こんなときこそ、相手の気持ちや一般常識よりも、あえて、自分自身の気持ちを優先することに挑戦してみましょう。 088

・どんなに絶世の美女であっても、その美貌で、さまざまな特権を享受していたとしても、「私は、私を愛するために行動する」という、自分中心的な能動性なしには、自己信頼は育ちません。 118

・「私がラクか苦しいか。好きか嫌いか。気分が良いか悪いか。からだがラクかきついか。それをしたいかしたくないか」 132

・責任は「私が決めた範囲」で取ればいい……それ以上の責任は、取る必要もなければ、感じる必要もない、ということです。 154

・「悩みの種」をつくるパターンの一つに、相手の心の中を探ろうとして、それで頭の中がいっぱいになってしまう状態があります。他者中心の典型ですね。 171

・引きずらないで相手に「聞く」……あなたの悩みは、”聞く”ことで、一瞬にして、消えてしまうでしょう。 173

・<聞くための勇気を育てる処方箋> 174-7

・……自己信頼……この感覚の分量が多いほど、運もよくなっていくと、ほんとうは誰もが経験的に知っているはずです。 183-4

・クヨクヨ思考が止まる!「つぶやき」レッスン……「私」を受け入れる言葉を唱えよう。186-8

・自分中心になるにつれて、悩みが解消されるだけでなく、幸せも、成功も、経済力も、すべて、あなたの至近距離にあるのだと、気づいていくでしょう。 195

・「責任を果たそうとすればできたはずなのに、後回しにして責任を取らなかった」という、この「うしろめたさ」が、正当にお金を得るチャンスを妨害してしまうのです。その罪悪感から、わざと、お金を得ないほうへと自分を導くのです。……私の責任を果たす。この「責任を果たす感覚の気持ちよさ」を実感することが、「収入を得てもいい意識」を育てます。その意識が、自動的に「収入を得る行動」となっていきます。 199-200

・「女王様の気分」テクニック 203-4
・「私から相手に頼む」レッスン 208-9
・「ありがとう」を”私への感謝”として使う 213-4
・「ごめんなさい」を、心理的な貸し借りをなくしてチャラにし、罪悪感を感じないために使う 214
・不当な「関係性」を変えるレッスン 218-20


抜き書きしていて、俺自身が実践できていない項目にいくつも気づいた。当分座右に置いて、読み返すことになるだろう。

「つい悩んでしまう」がなくなるコツ「つい悩んでしまう」がなくなるコツ
(2009/09/11)
石原 加受子

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盛々夏野菜

Author:盛々夏野菜

男性、既婚、事務系サラリーマン。
現代思想フェチだが、本を読むのが遅いのであまり多くは読めない。地底人生活を経て現在は臨床心理に関心がある。新鮮な胡瓜が好き。
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