きゅうり

 

盛々夏野菜のハードエッセイ & ショートストーリー 【思想、心理、書評、劇評、感想、あらすじ】
 

 

 
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今までに知った悲しみのすべてと
今までに聞いた秘密のすべてについて
もしも私が大声で叫んだなら
誰かが重荷をひきうけてくれて
私の心は安らぐだろう
でも 私は何も言うまい

沈黙(静寂)と私
二人は同類
二人で語り合えるといいね 思っていることのすべてを

沈黙(静寂)と私
二人は同類
その夢はきっと実現できるだろう
(以下略)


奇跡の名作だ。この楽曲は音楽の可能性の極限に挑戦した。そして音楽には人間の深い悲しみを表現する力があるということを証明した。

この曲の歌詞の凄さは「沈黙(静寂)」を擬人化したことであろう。深い悲しみのあまり沈黙を友として生きる「引きこもり」の主人公は、沈黙(静寂)と語り合いたいと願う。もちろん、そんな夢が実現するはずのないことは彼(彼女)にも痛いほどわかっている。しかしその夢は彼(彼女)にとって唯一の希望なのだ。

間奏における管弦楽の爆発はあまり評判がよくない。ボーカル部分と間奏部分との音量の差が激しすぎて、バラードの小品を無理やりプログレッシブ・ロックの大曲に仕立てたような印象を与えるからだ。しかしそうではない。それは作曲家の意図なのだ。「沈黙」を歌うバラードであるがゆえに、沈黙の裏側の「欲動」を表現する間奏は饒舌でなければならなかった。ボーカル(言葉)が沈黙し、管弦楽に主役の座を譲るとき、彼(彼女)の意識も背景に退き、無意識の欲動が駆けめぐる(注1)。それは言葉にできない悲しみかもしれないし、言葉にできない怒りかもしれない。あるいは、言葉によって疎外されないゆえに自分らしく振るまえる喜びかもしれない。

もし彼(彼女)が「沈黙(静寂)」と語り合うことができるなら、二人がコミュニケーションに使うのはおそらく「欲動」の渦であろう。沈黙には言葉がないからだ。そう考えると、この間奏は二人のありえない「語り合い」を表現しているともいえるだろう。

(注1)言葉の消去と欲動の爆発。この手法にはおぼえがある。それは「崖の上のポニョ」で、ポニョの欲動が海底世界のエネルギーを解き放ち、高潮を引き起こすところだ。

Alan Parsons Project - Silence And I

アイ・イン・ザ・スカイアイ・イン・ザ・スカイ
(2013/07/24)
アラン・パーソンズ・プロジェクト

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こちらに引っ越しました。












遠く離れたおまえに

スペイン、モロッコ、ギリシャをレンタカーで回り、気分が乗った場所でマイクをセットして歌う。
街角で、広場で、海辺で、そしてアルハンブラ宮殿で。
そして10テイクがセレクトされアルバムになった。

これだけ聞くと、ただの無謀な企画盤と思われるかもしれない。

問題はそのクオリティの高さなのだ。
きよしさんのボーカル、そしてカミワザの域といっていいギターについては今さら贅言を要しない。
突然のライブに聴き入る現地のひとびとのかけ声、子どもたちが遊び戯れる声、さらには、通りかかった羊の群れの鳴き声と鈴の音……すべてを効果音として取り込み、またとない「サウンドの小宇宙」を現出させている。
それゆえ、このCDを聴いていると、どの楽曲も、ここに収録された時間と場所以外では決して成立しえなかったような気がしてくる。
そして録音のよさも忘れてはならない。

オリジナル6曲と訳詞4曲のどれもすばらしく、ワールド・ミュージックの先駆けといわれるきよしさんの面目躍如たる代表作である。

さて、オリジナルLPは、キングレコード傘下に音楽プロデューサーの 兼松”Flash”光 さんが立ち上げた「フラッシュレコード」から1979年に出ている。

その後、1992年に「アナザー・ドア」との2 in 1アルバムとして初CD化されたようだ。しかし全曲は入らず、3曲カットされた。
しかも俺が気がついたときには廃盤になっていた。

2005年、上記の兼松さんが立ち上げた「フラッシュポイントレコード」からデジタル・リマスターで完全復刻された。LPリリース時に高校生だった俺は高校生の父になっていた。

最初はきよしさんのライブ会場と、フラッシュポイントレコードのオンラインショップでしか買えなかった。

このCDのすばらしさと歴史的意義を確信していた俺は、生意気にもフラッシュポイントレコードwebサイトのメールフォームからメジャー発売のお願いを投稿した。
そして、上記の兼松さんから採算面で難しい旨のお返事をメールでいただいた。
メールの内容にはがっかりしたが、あこがれのプロデューサーからじきじきにメールをいただいたことがやけに嬉しかった。

ほどなくアマゾンでも買えるようになったがインディーズ扱いであった。また、このCDがCDショップの店頭に並ぶことはついになかった。

そして、2011年9月現在、フラッシュポイントレコードwebサイトは閉鎖されている。アマゾンの在庫もない。
ぜひ何らかの形で再発してほしい。この名作を埋もれさせたくない。

遠く離れたおまえに
 
テーマ * j-pop ジャンル * 音楽

 

 

 

 
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スニーカーダンサー


本人がそう語っているわけではないが、当時、天才・井上陽水が取り組んでいたテーマは「意味からの離陸」であった。
シュールな歌詞が圧倒的な起爆力をそなえ、意味の呪縛から飛び立った得がたい瞬間の記録がこのアルバムだ。

残念ながらこの飛翔は長くはつづかない。それはつかの間の奇跡であって、やがて落下する時がやってくる。

というのも、いかにしてこの前人未踏の境地に到達しえたかは当人にも謎であり、それを再現しようと意識しはじめたとたん、シュールな歌詞の背後にありふれたメタファーがしのびこみ、やがて歌詞そのものも紋切型におちいってゆくからだ。天才・井上陽水でもそれは避けられなかった。
本作につづく『EVERY NIGHT』、『あやしい夜をまって』、『LION & PELICAN』、『バレリーナ』はそのような過程を示しているとみることもできる。ただし、これらも並のアーチストに可能な作品ではないのだが。

『スニーカーダンサー』にもどろう。
強烈なインパクトを持つ「3.事件」、「6.なぜか上海」もいい。
コミカルなタッチの「2.Mellow Touch」、「8.娘がねじれる時」も聴かせる。
しかし、最大の聴きどころは、シュールな歌詞が倫理性と切り結ぶ傑作群、つまり、竹田青嗣先生が『陽水の快楽』で激賞した「4.今夜」、小室等が絶賛した(陽水談)という「5.ジェニー My Love」、久保田利伸がカバーしている「9.海へ来なさい」、そして「10.勝者としてのペガサス」であろう。
もちろん、通して聴くのが一番だ。

スニーカーダンサー[SHM-CD]
スニーカーダンサー
陽水の快楽―井上陽水論 (ちくま文庫)
Gold Skool
 
テーマ * j-pop ジャンル * 音楽

 

 

 

 
ジャンプ  

ブレア・ラビットの物語を題材としたミュージカル仕立てのコンセプト・アルバム。
音楽の楽しさを心から味わえる1枚である。

ロックを基調としながらも、ホーン、ハーモニカ、バンジョー、スティール・ドラムなどの多彩な楽器で豪華絢爛なサウンドが繰り広げられる。
そして子供から大人まで楽しめる親しみやすいメロディ。俺は決してそういう趣味ではないのだけれど、このCDにはやられた。まいった。
音楽の批評をやる力がないので、こうして印象を書きつけることしかできないが、せめてこのCDに出会えた幸福に感謝したい気持ちであることは述べておこう。感謝なんて俺の柄ではないのだが。

ジャケットは2種類あって、上の写真は初期のLPジャケットを復刻した限定盤のもの。

Van Dyke Parks "JUMP! " 国内盤の発売元はワーナー・ミュージック・ジャパン

ジャンプ!<紙ジャケットCD>


 
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Author:盛々夏野菜

男性、既婚、事務系サラリーマン。
現代思想フェチだが、本を読むのが遅いのであまり多くは読めない。地底人生活を経て現在は臨床心理に関心がある。新鮮な胡瓜が好き。
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